傾聴。英語ではactive listeningとも言います。
コーチングのスキルの中で、僕が最も大切にしている「傾聴」について。
そのスキルの基本についてご紹介します。
お仕事で人の話しを聴く機会が多い方にも応用できる内容ですよ。
コーチに求められる傾聴力
コーチングを実際に行っていく上で、必要なスキルがいくつかあります。
傾聴は、その中でも最も重要なスキルだと僕は考えています。
コーチに求められる傾聴力は、単にクライアントさんの話を注意深く聞くことに留まりません。
誰もが認めることだと思いますが、言葉というものは、その方の内側にあるものの一部しか表現できません。でも実は、ものすごい規模の奥行きがありますよね。
その奥行きを、どこまで捉えられるか。そこが鍵となります。
傾聴を3つのレベルに分類している
クライアントさんの深い奥行きを捉えるため、私たちコーチは、傾聴を3つのレベルに分類して使い分けています。
コーチが、この3つのレベルのどこにいるかによって、話し手であるクライアントさんに与えるインパクトが違ってきます。
シンプルに言えば、話し易さに違いが出てきます。
より深いところまで安心して話していただけるかが大事です。
レベル1:内的傾聴
これは、聴き手が自分自身に意識の焦点を当てる聴き方です。
相手の言葉は聴いてはいるものの、それが自分にとってどんな意味があるかに焦点が当たっています。
相手の話に触発されて、聞き手の中では、
「そういえば、あれはどうなっただろう?」
「もっと、こうすれば良いのに」
ややもすれば、
「晩ご飯は何にしよう」
「なんか、イライラする内容だなぁ」
などと考えている状況です。
あるあるの痴話喧嘩で、
「ちょっと、話しを聞いてる?」
「聞いてるよ!」
となるのは、聞き手がこのレベルにいる時です笑
レベル2:集中的傾聴
これは、聴き手が相手にしっかりと意識の焦点を当てる聴き方です。
恋人が、互いに相手を見つめ合い、周囲で何が起きているかに殆ど意識が向いていない時のようなイメージの聴き方です。
コーチは、クライアントの表情や声のトーン、仕草、発するエネルギーなど、あらゆるものに意識を向いています。
レベル3:全方位的傾聴
これは、自分の周囲360度すべてに意識が向いている聴き方です。
周囲の環境など、話し手とは直接関係のないところにも意識が向いています。
それでいて、決して気持ちが分散しているわけではありません。
レベル2が、クライアントさんにしっかりとフォーカスが当たっているのに対し、レベル3はクライアントを中心としながらも、ソフトフォーカスに捉えている感じです。
例えば、落語家の方が、まくらの内容や長さを、その場のお客さんの雰囲気から決めるなんてことが言われますが、これはレベル3的です。
その意味では、日本人特有の「空気を読む」というのも、レベル3的なものの一面を捉えたものかもしれません。
これの良さは、最初はイメージしづらい感覚かもしれません。トレーニング中でも、このレベルを捉えるのは、皆さん苦労してます。
セッションで必要なレベル
お分かりかとは思いますが、コーチングの場でコーチに求められるのはレベル2と3です。
この両方を、ダンスをするように行ったり来たりしながら、場を紡いでいきます。
ただ、セッション以外の場であれば、レベル1も必要なもの。
例えば、レストランに入って、自分が何を注文するか考えるのはレベル1です。
「今日のおすすめは○○ですよ」みたいに話してくれている店員さんにレベル2的にメニューと向き合ったら、おかしなコミュニケーションになっちゃいますよね笑
傾聴は究極のスキル
コーチングに草創期から携わっている方のお話しを伺う機会があります。
そんな方々が口を揃えて強調するのは、究極のコーチングは、傾聴しているだけで完結するセッションだというのです。
ただクライアントの前に座り、コーチは殆ど言葉を発することはない。でもクライアントが劇的変化を起こしていく。
そんなことが起きるのだそうです。
そんなわけで、コーチの間で、「年を取って、耳が聞こえなくなっても、コーチングは続けられるね」なんて、冗談のような本気のような話をします。
まとめ
コーチングで最も重要なスキルである傾聴について、3つの段階に分けていることについてご紹介しました。
(実は、レベル4とでも言えるものもあるのですが、返ってややこしくなるので、また機会があれば。)
僕は、20代の頃から傾聴というものに関心を持ち、自分なりに探求を続けてきました。
コーチングと出会って、まさかここでも傾聴力が問われることになるとは驚きでした。それだけコミュニケーションの場では大切なのでしょう。
実際、人と関わるお仕事をされている方々を拝見していると、トップクラスの方は、傾聴力が高いことが窺えます。
同時に、多くの方に、傾聴される喜びを味わっていただきたいなと願っています。
それは、良いホテルで行き届いたおもてなしをされる体験のようなものだと思います。
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