『カルトの花嫁』by 冠木結心~愛という名の支配から脱出した軌跡

2022年7月8日に発生した安倍元総理の襲撃事件。その事件を契機に政治と宗教の癒着に注目が集まり、「宗教2世」という言葉が生まれ、社会問題に発展しました。

宗教2世(しゅうきょうにせい)とは、特定の宗教を信仰する親・家庭の元に生まれた子ども世代のことを指す。宗教2世を巡っては様々な問題が表面化しており、それらは「宗教2世問題」と呼ばれる。

Wikipedia「宗教2世」より引用

本書の著者は、そんな宗教2世のお一人。今回読んだ本は、彼女が自ら綴った、入信から合同結婚式を経て渡韓しながらも、脱会して帰国。日本社会に復帰していくに至るまでの期間を中心に綴られた自伝的な本です。

自慢にもならないかもしれませんが、僕は時事的な本は殆ど読みません。そんな僕が何故この本を手に取ったのか。著者と個人的なご縁があったからです。読む前は、それ以上でもそれ以下でもありませんでしたが、今は読んで良かったと感じています。

本の内容と、個人的なご縁からお伝えできるところもご紹介します。

目次

読むことになったきっかけ

こういった時事的な本は読まない僕が、この本を手にとるようになったきっかけ。冒頭にも書きましたが、彼女とは幼馴染のような関係だったからです。

彼女が一つ年上で年齢的にも近かったので、小さい頃、一緒にホッピングで遊んだ記憶などがあります。

お互い、思春期を迎えた頃から、会う機会も減りましたが、その後、彼女が宗教に入っていったことや、韓国に渡ったことは、両親を経由して聞いてはいました。ただ、自分にはどうすることもできないこともあり、あまり深く考えていませんでした。

脱会後、彼女が日常を取り戻し始めて間もない頃に再会。そのころ、僕はコーチングを始めていたのもあり、彼女がある学校で講演を依頼されて戸惑っている時に相談を受けたりもしました。本の中でも、講演を依頼されたことは綴られています。

本の中には登場しませんけど、ちょっとした自慢ですかね(笑)

その頃の彼女は、その時は韓国での話は深くは訊ねませんでした。まだまだ精神的な暗闇から抜け切れていないと感じられたのもあり。

でも、やっぱり、その空白の期間を多少なりとも知っておきたいというものでした。

宗教2世という言葉は、とてもスキャンダラスな事件から始まったものと感じています。だから、こんな個人的なつながりがなければ、こういった類の書籍に目を向けることは無かったと思います。

ここでは、僕が彼女から直接、訊かせてもらったものも、後半でお伝えします。

愛の名の下の支配

さて、本の内容のほうに入っていきましょう。

想像以上に壮絶だった!

読んで感じるのは、この一言に尽きます。

全体の3分の2以上は、「こんな事態が、現代の日本や韓国で起き得るのか?!」と我が目を疑うようなエピソードの連発。正直、ちょっとメンタルがやられそうでした。でも、こういうメンタルがやられそうなことを知ることの大切さを、最近は注目しています。例えばヒトラーとナチスの動きを知ることとか。

著者は、いわゆる合同結婚式を2度体験していますが、どちらの結婚も、一筋縄も二筋縄もいかないような相手が選ばれました。

普通の結婚なら逃げ出すという選択肢も選ぶことができます。それでも大変な苦労があると思いますが。

それでも宗教に彼女を留めて、しかも2度目の結婚式への参加まで至ったのは、宗教側から発せられる「あなたのため」というメッセージだったように思います。

これは、愛の顔をした支配でした。

それと、もう一つ感じるのは、著者の母親への愛です。

彼女が入信したきっかけは、母親への愛情表現としてだったと僕は感じています。愛することを決めた母親から、「こうするのが、あなたのためよ」と言われたら。ここを切ることは、生半可にできるものではありません。

結婚相手の傍若無人ぶりもすごいですが、この母親への愛からくる葛藤。

この2つの流れが、物語をより一層壮絶なものにしていたと感じます。

正しくSOSを出す

脱会を経てからの筆致は、どんどん力強いものになっていきます。

そんな中の言葉に「正しくSOSを出そう」というのがありました。

実際、2022年の夏、この本が出ることが決まって間もない頃に、彼女に会っています。その時に、2度の合同結婚式の話や脱会後のストーリーを訊かせてもらいました。

一緒にいた母が「本当に良かったね」と涙ぐむほど、必要なタイミングで必要な助けの手が差し伸べられてきていました。

これは、まさしく、彼女が人生を通じて学んだことなのでしょう。

私たちはSOSを出すことが難しい雰囲気の社会を生きています。個人の責任が重視されているのが大きいと感じています。

苦手は克服するべきだというメッセージに溢れています。苦手を克服しようとすること、そのものには良いも悪いもありませんし、時には大切なことです。でも、やはり大変なエネルギーが必要で、誰もが疲れ切っている。でも、そんな時に「疲れちゃったよ」って言える雰囲気は殆どありません。

だからこそ、この「SOSを出そう」というメッセージは大切なのです。

その前に必要なのが、自分自身がSOSを必要としているんだと認めること。それは、負けたように感じられるかもしれませんが、やはり私たちは一人では基本的に生きていけないのです。

一人では生きていけないというのは、他の人の助けというのがあるかもしれません。実際には太陽の光や水、植物や微生物などの存在がなければ生きていけないという意味も含みます。

最近、叶姉妹の「美と愛の名言集」に共感しまくり。
「カルトの花嫁」を自費出版していたころは、題名を「しくじり体験」としていたんです。(中略)事実を認め向き合うこと。非常に痛く苦しいことなのだけれど、これは回復のプロセスとしてはとても大事です。

冠木結心さんのTwitter 2023年1月14日 午前11:08 の投稿より

余談ですが、官庁に務める友人が教えてくれたのですが、日本のセーフティーネットは半端ではありませんね。社会の底辺の人たちであっても、必ず生き延びさせるんだという執念のようなものすら感じさせるくらい、手厚い制度があります。生活保護が代表的ですね。また本書の中で紹介されている「いのちの電話」もそういったものの一つでしょう。

こぼれ話

前項で触れましたが、2022年の夏に、彼女から直接、話を訊かせてもらった経験があります。

正直、結婚中のエピソードは、文章として読むほうが、サラッと受け止められる感じがします。直接話すと生々しいので、その時は少し手加減をしてくれていたように感じますが、それでも、重々しいものでした。

もちろん、文章だから伝わってくるものもありましたけどね。

その話の中で印象に残っているのは、合同結婚式に2度参加しているということは、相当なレアケースであるということです。宗教から祝福された結婚を一度蹴っているということがなければ起き得ませんから。

そして、帰国後、この数年での彼女を取り巻く状況の変化にも驚かされます。「SOSを出した」ことで、必要なタイミングで適切なサポートをしてくれる人が現れるのです。その絶妙さには毎回驚かされます。

こういった、一種の引き寄せのような部分も、これからの彼女のお役目なのかもしれません。

まとめ

『カルトの花嫁』の読後ブログでした。

本文でも触れましたが、僕の視点では、彼女は、母親に対する愛の表現として宗教への入信をしたわけですが、ここには自分に向けての愛ではなかったのだと思います。

それが、すさまじい葛藤へと連れ込んだわけですが、そこを手放すことができた今、残りの時間は、自分を愛することに費やしてもらえたらと、個人的には願ってしまいます。もう、ある程度やっていることも知っていますけど。

各方面から助言の要請がきていることも聞いていますので、その方向での活躍も社会的には期待されているところです。そちらは無理のない範囲にしてもらって。

当事者としては、やれることは全てやったと思っています。
本にも残せたし、自分の口で伝えることもできました。
あとは私に出来ることを、今までそうであったように、地道にやっていきます。
そして、やっと手に入れたささやかでありながらも平穏な日々を、これからも積み重ねていきます。

冠木結心さんのTwitter 2023年1月13日午後10:41 の投稿より
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