少食が健康の原点(甲田光雄)これは単なるダイエットの本ではなく人生哲学の書だ

書評

久々に書評ブログです。
今回読ませていただいたのは
『少食が健康の原点』(甲田光雄著、たま出版)です。
ミュージシャンのサンプラザ中野くんが、
少食生活に入ったきっかけとなった本として
知られているものです。

読む前は、単なるダイエット本の一種だろうと
高をくくっていましたが、実際には、単なる
食の取り組みよりもはるかに深い人生哲学とも
言えるものが綴られていました。

「愛と慈悲」と述べる著者の憤り

第1章の見出しを見ると、少食とは愛と慈悲である
と書いてあり、いきなり度肝を抜かれます。まず、

その姿勢に驚きつつも読み始めてみると、なんだか
違和感がある。
「これは愛と慈悲なのか?」
気になりつつ読み進めてみて見えてきたのは、
文章の端々に出てきている著者の憤りでした。
人々の豊かさを求める気持ちが、人々の人間性を
歪めてしまい、「いのちを粗末に」している、と。
自分の命も他者の命も。

出版年を見て納得しました。1991年。後年、
バブルの崩壊が始まったと、語られることに
なった年です。逆を言えば、著者が、この本を
正に書いている時はバブル真っ盛り。豊かな
経済と引き換えに、人々の欲望が暴走している
のを目の当たりにしてきたのでしょう。
それによって、癌などで苦しむ方が続出.
(当時は、癌は不治の病というイメージでした)
そこに対する憤りだったのだと分かれば、
納得もできます。

そう考えれば、その後に訪れる長い不況を
「失われた30年」なんて言いますが、
行き過ぎた欲望を整えるという時代だったと
考えれば、少し報われるかもしれません。
それだけ、この本に描かれている、人々の
欲望の暴走ぶりは、今の感覚では首を
傾げたくなるほど。
僕自身、バブルを経験していない世代ですが、
何か「これで良かったんだ」と思えてきます。

そして、本書は、その歪んだ欲望を元に戻す
だけでなく、更に一段も二段も、上の次元に
上げようという試みなのかもしれません。

著者は医学博士ですが、至るところで「愛」とか
「慈悲」といった言葉が綴られているので、
まるでお坊さんの説法みたいです。その意味で、
心を整えたい方にお薦めの本と言えるでしょう。

入門編から上級になると「仙人」も

本書は、少食を勧める本です。食事の量を
適正に減らすことで、排泄機能を活性化させる。
そうすることで胃腸の栄養吸収力が強化される、
ということを説いています。

一般の人でも取り組みやすいこととして、
朝食を抜き、午前中は体に老廃物の排出に
集中させるとか、月1~2回の断食のコツ
などが紹介されています。

もちろん、本格的な少食法も紹介されています。
特別なメニュー(食材自体は、どこにでもあるもの)
もありますが、最終的に1,200カロリー/1日に
するのだそうです。

ただ、これは最終目標で、特に病気などで
急を要する方でなければ、4~5年かけて、
少しずつ減らせば、ストレスを殆ど感じずに
少食生活に入っていけると綴っています。

例えば、1年かけて、200カロリー/1日を
減らすとか。これならできそう!
ちなみに、200カロリーは、お酒なら1合、
ビール1缶、食パン1枚強、ご飯が軽く1膳
ということです。

また、これを実施する方々の中には、
「仙人」という表現をされていますが、
1日100カロリー(青汁1杯だけ)まで
減らしたという方々も紹介されています。
著者が医学博士ということもあり、
「仙人」の方の健康状態のデータをとって
紹介されているのは流石です。

少食の4つのメリット(四愛)

少食の効用を、「小食の四愛」として
4項目挙げていますのでご紹介します。

腸内細菌叢への愛
少食にすることによって、腸内細菌叢
活力を与えられるということで、彼らを
大切に扱うことになるということ。
結果として、食べた物の消化を助けてくれ、
私たちが健康に暮らす一助になってもくれます。

もし私達が過食·飽食を続けていると、
腸管内で食物が腐敗し、健全な細菌類が
生存できないような環境となってしまう
でしょう。その結果、病原菌や有害菌が
繁殖しはじめることになるでしょう。

それが原因となって、色々な病気の芽が
できてくるわけです。

(93ページ)

全身の細胞への愛
少食によって栄養吸収のがスムーズになり、
結果、全身に栄養が行き渡るようになるので、
全身の細胞を大切にすることになる。
ここも、本書からの引用をご紹介します。

ところがもし、過食して夥しい栄養物が
体内に吸収されると、各臓器はこれらの
剰余栄養物の処理に追われて過労に
陥ってしまいます。

その結果、外へ向かって発揮されるべき
生命力を、過剰栄養分の処理に使わなければ
ならなくなり、大変なマイナスとなって
しまいます。

(94ページ)

飢餓状態にある人々へ回せる
私たちが無駄な食事をするのを減らし、
その分、飢餓で苦しんでいる人々の
ところへ届くようにすれば、彼らも
救われるという主旨です。

今でこそ、日本が食品を大量に廃棄している
ことが問題視されていますが、この本が
出されたのは、30年近く前であることに
着目したいですね。

福祉を豊かにする
2017年の調査ですが、日本人の朝食にかけて
いる平均金額は260円でした。仮にこれを
1億人が朝食を食べない選択をしたら、
1日で260億円が浮きます。これを1年に
換算したら9兆5千億円弱。消費税増税が
間近に迫っていますが、2%の増税で
確保される財源が5兆6千億円とされて
いますから、その分が確保できる上に、
むしろ余ってしまう計算になります。
仕組化できれば、十分に福祉に使える
わけですよね。

(ちなみに、この本が書かれたのは、
 消費税導入の直前でした。)

余談ですが、本書で紹介されている朝食の
平均金額は352円でした。この30年ほどで
100円近く減ってることになりますね。

これらの内容を今風に表現すれば、
持続可能な社会を築くための食生活として
できることは少食である
、と言えるのかも

しれませんね。

一番感銘を受けた、宗医一体の姿勢

ここが、個人的に一番響いた内容です。

凡人が少食生活を上手に進めていく
コツが紹介されていました。

少食生活への道の途中、どうしても
「大好きな甘いものが食べたい」と
なってしまうことはよくあることです。
そんな時に「甘いものは食べない」と
誓いを立てても守るのは難しい。
我慢しても、ある時、爆発してしまって、
つい口にしてしまったら、ドカ食いになる
上に、罪悪感にも襲われてしまいます。
これでは折角の取り組みが勿体ない。

こういう時は、祈りを活用することを
勧めています。医療と宗教の統合です。

たとえば、念仏宗の信仰者であれば、
自分の脳裏に食べたいものが浮んできた
場合、その度ごとに、南無阿弥陀仏と
念仏を唱え、いま自分の脳裏に浮んできた
食物を一度阿弥陀如来様にお預けするのです。

そのうえでお許しが出たら、それを
いただいてよろしい、もしお許しが
出なかったら、その食べものは自分には
縁がないものと、すっと手放してしまう。

このようにすべて神仏のみ心におまかせ
するという、つまり全託の生活に入ると
よい
のです。

(中略)

こうして少食とお祈りは一体化するわけ
ですが、結局少食を実行する上での
お祈りには二つの意味が含まれているのです。

一つは、大切な命を捧げてくれた動・植物
(米や魚)に対して、感謝の気持ちを現わし

且つまた、それらの動・植物が成仏できる
ように
と心をこめてお祈りする。二つには、

意志が弱くて、しかも貪欲な自分が神様に
おすがりして少食への道を通らしていただく
ためのお祈りです。

こうして、健康長寿への道は、宗教と食養
(医学)とが一体となってこそ、本当に
心安らかに少食の道を歩み続けることが
できるようになると思います。これが即ち
宗医一体の姿
です。

(88ページ)

※マーカーや太字は、てっつーによります。

「念仏宗の信仰者は」と書かれていますが、
要は、心の中に、好きな神仏の存在を感じて、
そちらに向けて問いかけてみる。
「内なる良心」とか、ご自分のロールモデル
の方に心の中で問いかけるのでも、同じことだと
僕は思います。

目標までの道のりで、どう自分をコントロール
するかというのは、何も少食に限った話だけ
ではないですよね。コーチングでも扱うことは
多いです。

この「全託」の感覚は、コーチングなどの
経験からも、効果的だと考えます。
コーチングを受けていると育ってくる
「内なるコーチ」。これとの対話をしながら、
自分をコントロールするという発想もあり、
とても似た印象があります。

本書の紹介ページ

最後に

『少食が健康の原点』の書評でした。
正直、ご紹介したい所はまだまだあります。
しかし、キリがないですし、そこまで
するのでしたら、ちゃんと読んで
いただいたほうが良いと思い、区切りを
付けました。

折しも、手に取った時は、僕自身の体質が
変わろうとしており、僕の体から
「食べないでほしい」
という声を受け取っていた時でした。
だから手に取ったわけではなく、この本が
積読状態だったので、「もう処分しよう」と
手に取ったら、何故か読みたくなって
読み始めたわけです。まさか、こんな内容が
書かれているなんて思いもせずに。でも、
自分の置かれた状況から、今が読むのに
ベストのタイミングだったんだなと分かりました。

1日1食とか、結構厳しい小食法が紹介されて
いますが、腹八分にするだけでも、全く違う
のだとも書かれていて、できるところから

やってみれば良いんだと思えます。
1日3食というのが、ただの習慣で、
体は本当は求めていない、ということを
良い意味で疑ってみる良い機会になりますよ。

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